第1章 p16
スリランカでは、いまだにイギリスの植民地時代につくられたプランテーション制度に基づいたコミュニティが続いています。もう150年以上が経ちますが、プランテーションの労働者と家族は農園内の居住区域で暮らし、その子供も孫も代々、プランテーション農園の労働者になり、十分とは言えない賃金をもらって暮らしています。
第3章 p37
農園内には、幼稚園や託児施設のほか生活や福祉にかかわる様々な施設が整えられています。基本的に農園の外の社会に出ることなく生活できるのです。そのため何世代にもわたって、農園労働者は、一生のほとんどを、ひとつの農園の区画内から出ることなくすごすのです。
第4章 p66
市民としての権利を獲得できないのは、そもそも、彼らは自分たちが「市民としての権利」を持っていることさえ、知らないためです。彼らが劣っているからではなく、情報を提供されていないから「ない」のです。市民としての権利が得られない状態のままでは、昔ながらの農園労働を続け、貧困状態に甘んじるしかありません。
第5章 p68
大人も子どもも、農園の外に一度も出ることなく、一日が終わってしまうのです。とても便利という見方もできますが、外の世界から完全に隔離されているのです。
第7章 p106
けれど、働かないわけにはいきません。農園の人びとは、このような状況に「慣れた」と言います。しかし「慣れた」という言葉は、あまり前向きな表現では使いません。
第8章 p121
わたしたちが保護者会を重視する一番大きな理由が、親たちに子供の将来を考えてもらうことです。ほとんどの親は、いまの環境には満足せず、子どもたちにはもっと幸せになってほしいと願っています。
コメント
本書の著者と私は同じ大学に所属しており、意思決定やナッジ、動機づけや行動変容などについての雑談の際に、本書を紹介して頂きました。
ナッジや行動変容を省エネルギーや安全などで活用しようとするときには、多数を占める「無関心層」に以下にアプローチするのかが大きな課題となりますが、紅茶プランテーションで暮らす人たちの生活改善ついても「慣れ」てしまって環境改善への動機を失ってしまっている人たちが多いように思いました。
本書では、「こうすれば良い」といった答えは示されていません。他方、選択の自由の幅の狭い生活が私たちの日常にある紅茶の裏側にあることを鮮明に伝えています。
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